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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT TRAINING ROOM
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2019.02.25 UP
CASE29

《手が不自由な患者、粉薬の分包品から既製品に変えてコンプライアンス低下》

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

手が不自由な患者に処方されたラックビー微粒 N を、分包品から既製品(1 g 包)に変更して交付したところ、患者が上手く開けることができずにコンプライアンスが低下してしまった。

Prescription処方内容は?

<処方1> 70 歳代の男性。病院の内科。オーダ/印字出力。

酸化マグネシウム 1 g 1 日 3 回 毎食後 28 日分
ラックビー微粒 N 3 g 1 日 3 回 毎食後 28 日分
以上混合

<処方2>

マグミット錠 330 mg 3 錠 1 日 3 回 毎食後 28 日分
ラックビー微粒 N 3 g 1 日 3 回 毎食後 28 日分

図.「ラックビー微粒 N」の既成分包品(左)と薬局で分包したもの(右)。

<効能効果>
●ラックビー微粒 N(ビフィズス菌)
腸内菌叢の異常による諸症状の改善

Historyどのような経緯で起こったか?

患者は脳梗塞の後遺症があり、上肢が少し不自由である。患者は、酸化マグネシウムとラックビーを混合して分包したもの(処方1)は問題なく服用できていた。  ある時、病院採用薬の変更で酸化マグネシウムがマグミット錠に処方変更となったのに伴い、ラックビー微粒 N も 1 g の既製分包品で交付した(処方2)。  次の来局時、患者から「既製品の包装が硬く、開封時にこぼれてしまって、うまく服用できなかった。」と訴えがあった。そのため、ラックビー微粒 N は、既製品ではなく分包して渡すこととした。

Worst scenario最悪の事態

腸内菌叢の異常による諸症状が改善しない。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

薬局で分包した包装と既製分包品の包装では、開封に必要な力に違いがあった。後者の方がより強い力が必要であった。   錠剤および既製分包品に変更になることを患者に簡単に説明したが、既製品の方が包装が硬く、サイズも小さいのでこぼれやすい可能性がある点など、詳しくは説明しなかった。そのためか、薬剤交付時点では、患者は特に気に留めていない様子であった。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

投薬にあたっては、患者の状態(基礎疾患、高齢などによって指に不自由さが見られるかどうかなど)に合わせて、包装が硬いため開けるのに力が必要である、包装が小さいためこぼれやすい等についても配慮し、患者とともに適切な調剤方法を話し合う必要がある。   患者には、実際に製品を手に取ってもらって、使い勝手を試してもらうことも有用である。

Communication服薬指導は?

『ラックビー微粒 N は既成の分包品が販売されていますが、どうしましょうか? ここにありますので手に取って見てください。……そうですか、開封する時にかなり力が要るのですね。それから小さくて掴みにくいということですね。わかりました、これまでと同様に薬局で分包してお渡ししますね。』

Special instruction特記事項は?

既成分包品の開封しやすさ 分包品の開封のしやすさは、包装の材質や切れ込み(ノッチ)の有無などによって変わってくる。また、普通の人にとっては問題なくとも、高齢者や関節リウマチの患者など指先での開封作業が困難になることもある。開封が困難になると、服薬コンプライアンスの低下にも繋がることから、開封しやすい包装にすることは重要である。倭文らは、高齢者を対象とした調査などにもとづき、高齢者や手指機能障害のある患者にとっても比較的開けやすい条件として、以下を挙げている1)。
・縦長の長方形で、開封時に薬剤がこぼれにくい設計にする
・視覚的・触覚的に認識しやすいV型ノッチ(切れ込み)を設置する
・手指に傷を作りにくい角を取ったノッチの設計にする

[引用文献]
(1) 倭文啓恵ほか. 医療薬学. 37(3): 165-172, 2011.

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