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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT TRAINING ROOM
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2019.02.25 UP
CASE19

テオドール錠を噛んでしまうてんかん患者

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

患者(てんかん)は、他の薬局で交付されていたテオドール錠を噛んで服用していた。

Prescription処方内容は?

<処方1>
70 歳代の女性。病院の内科。オーダ/印字出力

デパケン細粒 20% 2g 1 日 2 回 朝夕食後 14 日分

<処方2>
他院の内科(お薬手帳の記載)

テオドール錠 100 mg 2錠 1 日 2 回 朝夕食後 14 日分
*脳梗塞の既往がある。言語や嚥下機能、認知機能は正常。脳梗塞後、口の中に入れた物をそのまま飲み込むことができず、どうしても噛まないと飲み込めない。

図.「テオドール錠 100 mg」の包装(左)と錠剤(右)。

図.「テオドール顆粒 20%」の包装(左)と錠剤(右)。

<効能効果>
●テオドール錠 100 mg(テオフィリン)
  気管支喘息、喘息性(様)気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫

Historyどのような経緯で起こったか?

本てんかん患者は薬剤を噛んで服用する癖があるという情報をデイケアスタッフより得ていたため、もともとの処方はデパケン R 錠 200 mg<バルプロ酸ナトリウム>であったが、デパケン細粒に処方変更してもらい、交付していた(処方1)。
ある時、患者のお薬手帳を見たところ、他の病院・薬局よりテオドール錠 100 mgが処方・交付されていた(処方2)。デイケアスタッフに確認すると、やはり錠剤は全て噛んで服用していたことが判明した。幸い、テオドールの血中濃度上昇によるてんかん発作は起きていなかった。

Worst scenario最悪の事態

テオフィリン中毒から中枢性痙攣が惹起する。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

患者はお薬手帳もしっかりと活用していたにも関わらず、当薬局は患者が「錠剤を噛む」という情報を得ていたが、お薬手帳の患者情報欄に「錠剤は全て噛んで服用する」と記載していなかったため、他の薬局に情報が伝わらなかった。
また、他の薬局では、テオドール錠の服用の仕方に注意を払っていなかった。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

お薬手帳には、併用薬などだけではなく、服薬コンプライアンスに影響のある患者の服用に関する癖などを明記し、他院・他薬局に注意喚起するようにしたい。当該患者では、お薬手帳の患者情報欄に「錠剤は全て噛んで服用する」と記載し、その部分に付箋を貼ることで他の薬局に対しても目立つように注意喚起する。
当該患者には錠剤、カプセル剤の処方は可能な限り回避する。例えば、テオドール錠の代わりにテオドール顆粒 20% を使用する。

Watchword標語は?

・お薬手帳に服薬コンプライアンスの状況を記載!
・お薬手帳の服薬コンプライアンスの状況をチェック!
・患者に最適な剤形が選択されているかチェック!

Special instruction特記事項は?

テオフィリンは、中枢刺激作用によって発作を起こすことがあるため、てんかんの患者(本事例)には慎重に投与する必要がある。また、小児、特に乳幼児は、成人に比べてテオフィリン使用後に痙攣を惹起しやすい。
テオドール錠とムコダイン錠(カルボシステイン)を母親が粉砕して子供に飲ませたところ、テオフィリン中毒と思われる症状が起きたとの症例が報告されている [文献 1]

<子供にテオドール錠を粉砕して服用させた母親>

<処方1>(2 週間前) 11 歳の男児。気管支喘息。

テオドールドライシロップ 20% 1g(製剤量) 1 日 2 回 朝夕食後 14 日分
ムコダイン DS 50% 2g(製剤量) 1 日 2 回 朝夕食後 14 日分

<処方2>(今回)

テオドール錠 100 mg 2錠 1 日 2 回 朝夕食後 14 日分
ムコダイン錠 500 mg 2錠 1 日 2 回 朝夕食後 14 日分

患児は気管支喘息のため、処方1のドライシロップ剤が処方されていたが、年齢が高くなったことや1回に飲む薬のかさが大きいことから、今回より処方2の錠剤へ変更になった。ところが後日、母親から「薬を飲ませたら、子供が興奮したり、手が震えたりした。副作用ではないか。」との訴えを受けた。薬剤師が服薬状況を確認したところ、テオドール錠とムコダイン錠を粉砕して子供に飲ませていたことが判明した。母親は今まで粉薬しか服用させたことがなかったので、今回もそうしたとのことだった。
テオドール錠はテオフィリンの徐放性製剤である。徐放性製剤を粉砕すると、徐放性が消失し、一過的な血液中濃度の上昇により急性副作用が増大する危険性がある。患児が興奮したり、手が震えたりしたのはテオフィリンの血中濃度上昇による急性テオフィリン中毒の可能性がある。薬剤師は、テオドール錠は徐放性製剤であるため、粉砕してはいけないことを説明していなかった。また、テオドールドライシロップからテオドール錠に剤形が変更となったときに、患児が錠剤を服用できるかどうかの確認を行わなかった。
徐放性製剤など、特殊な製剤加工がなされている薬剤については、その製剤的な特徴をよく理解しておく必要がある。処方薬の剤形が変更となったときには、変更の理由を確認し、服用可能かどうかや服用時の注意点を説明する。粉砕などにより製剤特性が変化する恐れのある医薬品を交付する際には、必ず製剤学的特徴をわかりやすく説明し、注意点を伝える。今回のように徐放性製剤を交付する際には、徐放性が消失するために割ったりつぶしたりせずに服用するよう説明する必要がある。

参考文献:
1) 澤田康文:「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント2」、p.172-173、日経 BP 社 (2008)

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