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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT
TRAINING ROOM
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2019.03.20 UP
CASE34

《下痢気味、胃弱だから、ゲンタシン軟膏が「腹部の処理」に?》

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

2 回目の来局時に対応した薬剤師は、1 回目の来局時に記載された薬歴により、トンチンカンな服薬指導を行いそうになった。

Prescription処方内容は?

<処方1> 50 歳代の男性。病院の呼吸器外科。オーダ/印字出力。1 月 18 日。

ゲンタシン軟膏 0.1% 10 g 1 日 1 回 塗布
*塗布部位の記載無し

<処方2> 病院の呼吸器外科。1 月 25 日。

メチコバール錠 500μg 3 錠 1 日 3 回 毎食後 14 日分
ロキソニン錠 60 mg 3 錠 1 日 3 回 毎食後 7 日分
ムコスタ錠 100 mg 3 錠 1 日 3 回 毎食後 7 日分

図.「ゲンタシン軟膏 0.1%」のチューブ包装

<効能効果>
●ゲンタシン軟膏 0.1%(ゲンタマイシン硫酸塩)
表在性皮膚感染症、慢性膿皮症、びらん・潰瘍の二次感染

Historyどのような経緯で起こったか?

1 月 18 日(処方1)と 25 日(処方2)の処方箋のレセコン入力で診療科名が間違っており、実際は“呼吸器外科”のところ“外科”となっていた。1 月 18 日に投薬した薬剤師 A は、診療科名の入力間違いに気づかず、また、ゲンタシン軟膏を「腹部の処理」に使用と薬歴に記入していた。
1 週間後の 25 日に、薬剤師 B が投薬前に診療科名の入力ミスに気づき、事務員に訂正してもらった。また、薬歴に記載された「腹部の処理」と、今回のメチコバール錠<メコバラミン>の処方との関連が想起しにくかったため、患者に話を聞くことにした。
患者は気胸の処置後の経過観察で呼吸器外科を受診し、本日の診察では、医師に処置後の左腕にしびれがあることを伝えたとのことだった。18 日の薬歴をそのまま信じていたら、「お腹の状態はどうですか?」のような、今回の受診とは関係のない服薬指導を実施するところであった。

Worst scenario最悪の事態

薬剤師からの的を射ない質問で患者に不信感が生まれる。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

処方箋発行元の病院では、“外科”といえば“消化器外科”のことを表している。また、薬歴には、併用薬名としてガスター錠<ファモチジン>やイリボー錠<ラモセトロン塩酸塩>などが記入されており、患者基本情報として「体質は下痢がち、胃弱」と記載してあった。これらの情報から、薬剤師 A は、患者は消化器系に問題があって消化器外科にかかったと思い込んでいた。
さらに、1 月 18 日は患者本人ではなく来局していた妻へ投薬していた。薬剤師 A が妻に「今日は、どういったことでおかかりですか?」と聞くと、妻は「夫は、お腹の具合が悪くて・・・」と答えた。その時、別の薬剤師から別件で質問があり、それに対応していたら、妻への詳細なインタビューを失念し、そのまま交付してしまった。その後、ゲンタシン軟膏の処方はお腹のトラブル(皮膚感染症など)のためだと勝手に思い込み、薬歴に「腹部の処理」と記載してしまった。
また、処方箋には塗布部位の記載がないので、医師に疑義照会をするべきであった。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

初めて来局した患者には、丁寧にインタビューを実施することにより、次回以降の投薬がスムーズになることを認識する。また初回のみならず、それ以降の聞き取りも丁寧に実施する。
他の案件のために服薬指導を中断した場合には、直近に話題にしていた事項について、もう一度最初から行う。
また、診療科名の間違いは些細な間違いであり、投薬後にでも修正すれば問題ないと思いがちだが、誤った服薬指導につながる原因となることを認識する。一般外科、消化器外科、呼吸器外科などの外科系診療科は、通称や略称を用いない。

Communication服薬指導は?

『今日は、どういったことでおかかりですか? ・・・すみません、少々お待ちを・・・。すみません、お待たせしました。どういったことでおかかりですか? ・・・そうですか、気胸の処置の経過観察でかかられて、処置の傷跡に塗るお薬が処方されたのですね。・・・』

Watchword標語は?

・薬歴は、別の薬剤師が誤解しないように記載!
・服薬指導の中断は、続きは最初に戻る!
・「○○外科」を略称、通称で呼ばない!

Special instruction特記事項は?

気胸と胸腔ドレナージ
気胸とは、肺が破れるなどして肺と胸郭の間に空気が溜まった状態である。破れた肺は自然に塞がることが多いが、溜まった空気はなかなか抜けないので、肋骨の間から胸腔にチューブや針を刺して空気を抜く処置を胸腔ドレナージという.

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