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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT
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2019.02.25 UP
CASE02

お薬手帳を親子で共有していた

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

5歳の女児のお薬手帳に母親に交付された薬剤のシールが貼付されていた。

Prescription処方内容は?

<処方1> 5歳の女児。クリニックの小児科。手書き処方。5月28日。

シングレア細粒4mg 1包 1日1回 就寝前 30日分

図1.「シングレア細粒 4 mg」の包装(左)と細粒(右)

図2.お薬手帳

<効能効果>
●シングレア細粒 4 mg、シングレアチュアブル錠5mg(モンテルカストナトリウム)
気管支喘息
●シングレア錠5mg・10mg、シングレアOD 錠10mg(モンテルカストナトリウム)
気管支喘息、アレルギー性鼻炎

Historyどのような経緯で起こったか?

患者(女児)と母親は、今回が初めての来局であった。女児は小児喘息のためシングレア細粒を継続して服用していた。
調剤した薬剤師が、計数調剤を開始する前にお薬手帳で併用薬を確認したところ、「フロモックス錠とムコスタ錠の5日間」という成人に対する処方と思われる薬剤内容のシールが貼付してあった(図3)。驚いてシールの記載内容を詳しく見たところ、女児の母親に処方された薬剤であった。お薬手帳は半分以上のページにシールが貼られている状態であり、最初のページから確認したところ、母親のシールは2回分が貼付されていた(もう1回の処方内容はロキソニン錠・ムコスタ錠・モーラステープ 20 mg であった)。
母親に確認したところ、母親自身はあまり病院にかからないのでお薬手帳を作成していないが、薬局に行くとシールだけくれるので、母親が自分で子供のお薬手帳に一緒に貼付していたとのことである。母親としては、子供の薬とは明らかに処方内容が異なるため、お薬手帳を共有しても親子2人の薬を混同して混乱が起きることはないと考えていた。

図3.5歳児のお薬手帳

薬剤師は、お薬手帳は共有しないよう説明した。今回は、薬の内容が5歳児に処方されることのない薬剤だと一見してわかったため、薬剤師は母親のものだと認識できた。しかし、例えば、医師がお薬手帳をざっとみて母親の薬だと気づかず、「フロモックスを服用したことがあるから大丈夫」(本来、小児にはフロモックス小児用細粒が処方されるはずであるが医師は"フロモックス"しか見ていない)とフロモックス小児用細粒を処方する可能性もある。その場合、もし女児がセフェム系抗生物質にアレルギー歴があれば、副作用(薬疹など)が惹起する危険性もあることなどを説明した。

Worst scenario最悪の事態

セフェム系抗生物質にアレルギー歴の小児にフロモックス小児用細粒が処方されて副作用(薬疹など)が起こる。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

母親がお薬手帳の意義と使用法を全く認識していなかった。薬剤師は、お薬手帳の意義、正しい使用法などを患者・保護者に説明していなかった。
薬剤師はお薬手帳を毎回チェックしている。例えば、今回の処方薬との併用(組合せ)が問題となる他の薬を服用していないか?、過去に副作用歴があるのに同じ系統の薬が今回処方されていないか?などをチェックしている。母親は、お薬手帳というものは「薬剤師がシールをただ貼るだけの物」だと感じていた可能性がある。即ち、交付されたシールをただ自宅で自分でお薬手帳に貼付するだけであった。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

患者(またはその家族)は、お薬手帳を医療機関や薬局に毎回持参して、医師や薬剤師に提示する。
薬剤師は、お薬手帳の意義と正しい使用法を患者に説明して、理解してもらう。

Communication服薬指導は?

『我々薬剤師は、患者さんのお薬手帳を毎回チェックしています。何をチェックしているかといいますと、今回のお薬と他の病院で出ているお薬とに、飲み合わせの問題がないかどうか、そして、以前にお薬を使って副作用があったのに、今回も同じ薬が出ていないかどうかなどを確認しているのです。他にも確認すべきことは沢山あります。ですから、お薬手帳は、病院や薬局へ行くと時は必ず持参してください。そして、医師や薬剤師に必ずチェックしてもらうようにしてくださいね。お薬手帳はあなたの身をしっかり守ってくれますよ。』

Special instruction特記事項は?

[モンテルカストの薬効薬理]
<気管支喘息>
モンテルカストは、システイニルロイコトリエン タイプ1 受容体(Cys LT1受容体)に選択的に結合し、炎症惹起メディエーターであるLTD4やLTE4による病態生理学的作用(気管支収縮、血管透過性の亢進、及び粘液分泌促進)を抑制する。この作用機序に基づき、モンテルカストは抗喘息作用として、喘息性炎症の種々の因子を改善する。
<アレルギー性鼻炎>
アレルギー性鼻炎では、抗原曝露後に、即時相及び遅発相のいずれにおいてもシステイニルロイコトリエンが鼻粘膜から放出される。その放出はアレルギー性鼻炎の症状発現と関連がある。また、システイニルロイコトリエンの鼻腔内投与は鼻腔通気抵抗を上昇させ、鼻閉症状を増悪させることが示されている。モンテルカストはロイコトリエン受容体の作用を遮断することにより、アレルギー性鼻炎症状の緩和に重要な役割を果たすことが示唆されている。

シングレア細粒 4 mg のインタビューフォームより

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