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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT
TRAINING ROOM
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2019.02.25 UP
CASE12

ペントキシベリン錠がクラリス錠に見えると不安を感じた患者

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

ペントキシベリンクエン酸塩錠「JG」の PTP シートを見た患者は、クラリス錠 200 と間違いそうだと不安になった。

Prescription処方内容は?

<処方1> 70 歳代の女性。病院の内科。オーダ/印字出力。

ムコソルバン錠 15 mg 3 錠 1日3回 毎食後 7日分
トクレススパンスールカプセル30mg 3 Cap 1日3回 毎食後 7日分
クラリス錠 200 2 錠 1日2回 朝夕食後 7日分
他の処方薬は省略        

<処方2>

ムコソルバン錠 15 mg 3 錠 1日3回 毎食後 7日分
ペントキシベリンクエン酸塩錠 30 mg「JG」 3 錠 1日3回 毎食後 7日分
クラリス錠 200 2 錠 1日2回 朝夕食後 7日分
他の処方薬は省略        

図1.クラリス錠 200 の PTP シート(上左)、ペントキシベリンクエン酸塩錠 30mg「JG」の PTP シート(上右)、トクレススパンスールカプセル 30 mg の PTPシート(下)

<効能効果>
●ペントキシベリンクエン酸塩錠 30 mg「JG」、トクレススパンスールカプセル30 mg(ペントキシベリンクエン酸塩)
 下記疾患に伴う咳嗽
  感冒、喘息性(様)気管支炎、気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、
  肺結核、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)

●クラリス錠 200(クラリスロマイシン)
 1. 一般感染症
  表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、
  外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、
  急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染、尿道炎、子宮頸
  管炎、感染性腸炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
 2. 非結核性抗酸菌症
  マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症
 3. ヘリコバクター・ピロリ感染症
  胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃 MALT リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、
  早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症、
  ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎

Historyどのような経緯で起こったか?

以前から処方されていたトクレススパンスールカプセル 30 mg<処方1>が飲みにくいということで、今回からジェネリック医薬品のペントキシベリンクエン酸塩錠 30 mg「JG」に変更となった<処方2>。薬剤師は、カプセル剤から錠剤へ変更になったことなどを説明して交付した。
患者は、自宅へ帰ってクラリス錠とペントキシベリンクエン酸塩錠「JG」を見比べたところよく似ているので、飲み間違うのではないかと心配になった。電話にて「同じものを 2 個飲みそうだ。」と薬剤師に連絡した。ペントキシベリンクエン酸塩錠 30 mg「JG」の PTP シートの表面には「鎮咳剤」と記載されているが、患者は目が不自由なこともあり、よく認識できなかった。
患者宅が薬局から近いこともあり、薬剤師は仕事を終えたあとに訪問した。そこで、ペントキシベリンクエン酸塩錠 30 mg「JG」の PTP シートの裏にマジックで「咳止め」と大きく記入したところ、患者は安心したようであった。

Worst scenario最悪の事態

一方を間違って 2 倍量服用して副作用発現、他方を間違って服用せずに治療効果不十分に至る。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

薬剤師は、ペントキシベリンクエン酸塩錠「JG」とクラリス錠の PTP シートが比較的類似していることに気がつかず、そのまま交付していた。薬剤師にとっては大きく類似しているとは考えられなかった。しかし、今まではトクレススパンスールカプセルであり、クラリス錠とは大きな違いがあったため、患者にとっては強い類似性を感じたものと思われる。
クラリス錠は錠剤に「クラリス」と薬名が印字されており、ペントキシベリンクエン酸塩錠「JG」と区別可能である。しかし、高齢の患者は、錠剤の印字による違いを認識し難いと思われる。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

薬剤師は、外観類似品のリストを作成し、外観の似た医薬品を認識しておく必要がある。
服薬指導時に、薬袋から薬剤を取り出して患者に見せ、類似性していた間違い易い薬剤を発見してもらう。区別が付きにくい PTP シートがあれば、今回のように、裏面に薬名、効能などを大きく記載する。

Communication服薬指導は?

『今回から、これまで飲みにくかったカプセル剤が錠剤へ変更となりました。念のために、今回のお薬を確認致しましょう。どうですか、混乱しそうな薬はありますか?・・・・「暫くして」・・・そうですか、この薬(ペントキシベリンクエン酸塩錠「JG」)とこの薬(クラリス錠)が良く似ていて飲み間違えそうなのですね。それでは、こちらの薬には裏面にマジックで「咳止め」と大きく記入しておきますね。』

Special instruction特記事項は?

以前、クラリス錠 200 とリーマス錠 200(図2の左)の包装類似による調剤ミスの報告があった。確かに図1のクラリス錠 200 とよく類似していた。しかし、リーマス錠 200 の包装変更がおこなわれ(図2の右)、クラリス錠 200 との類似性はかなり低下した。

図2.リーマス錠 100・200、バーコード表示および包装変更のお知らせ

(2014 年 9 月、大正富山医薬品株式会社)

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