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メディセレ薬局 現場からの声

医療の進歩と在宅医療

 皆さん、こんにちは。今日はメディセレ薬局も取り組んでいる在宅医療についてお話したいと思います。皆さんは在宅医療と聞いたとき、どの様な患者さんを思い浮かべるでしょうか。一人暮らしの高齢者を想像される方が多いかもしれません。実際、在宅医療を受けている患者さんの8割は75歳以上の後期高齢者なので、その印象は間違いではありません。しかし、近年では在宅医療を受ける小児や成人の数も増えてきました。
ではどのような小児や成人の患者さんが在宅医療を利用しているのでしょうか。

 その前に我が国の小児医療の進歩について少しだけお話したいと思います。1985年(昭和60年)における子供(0歳~19歳)の死亡数は約18,500人でした。これが、2001年(平成13年)には約8,000人、2010年(平成22年)には約5,800人にまで減少しています。乳児死亡率でいえば、1950年(昭和25年)では1,000人に60人の子供が亡くなっていましたが、1970年(昭和45年)には1,000人に20人に、2005年(平成17年)には1,000人に2.8人にまで減少しています。今や日本の小児・新生児の死亡率は世界で一番低く、もっとも赤ちゃんが助かる国といっても過言ではないでしょう。私たちが無事に大きくなったことも、いま皆さんと関わりのある多くの人々が無事に成長していることも、新生児・小児医療をはじめとする医学の発展と、それを支える医療従事者の方々の素晴らしい成果によるところが大きいといえます。

 多くの子供たちの命が助かる一方で、予想していなかった事態も発生しました。高いレベルの医療により、ほとんどの子供たちは元気に普通の生活ができるようになりましたが、命が助かったものの、様々な障害が残る子供たちも増加しました。その中には、自分で歩けない、話せないといった重症心身障害児も含まれます。医療が今ほど進歩していなかった頃は、重度の障害を持って生まれた、あるいは不幸にして後天的に障害を持ってしまった子供たちを救うことが出来なかったので、重症心身障害児のことが社会的な問題となることはありませんでした。しかし医学が発展し、その数が増えるにつれて社会的な問題として認知され、様々な法制度や社会資源の整備の必要性が訴えられるようになったのです。その一つが、小児や若年者への在宅医療です。このような背景もあり、現在、多くの小児や若年者~成人の障害を持った患者さんも、在宅医療を利用しています。その結果、そういった患者さんが、長期の入院生活に替えて自宅で家族と過ごすことを選択できるようになっています。

 では、小児や若年者が在宅医療を受けながら自宅で過ごすことのメリットは何でしょうか?医療という観点で考えれば設備とスタッフが整った24時間体制で医療従事者のケアが受けられる病院に入院している方が、よいような気がします。「生命の安全」はもちろん第一に大切ですし、それが確保された上で「健康の維持」も大切なことです。しかし、それだけで子供たちは人生の幸福を得られるでしょうか。医療の進歩でこの先の人生を考えることが出来るようになった彼ら、彼女らにとって「社会生活」を通して様々な経験をしていくことは、その成長にとても大切な意味を持ちます。家族と共に生活をし、外出をし、他者と出会い、可能なら学校に通い、友達を作ること。そういった社会との関わりがあってこその社会生活ではないでしょうか。在宅医療はそれを叶える大切な手段の一つなのかもしれません。

 ところが、今、在宅医療を利用して社会生活を送り始めた小児や成人は、次の問題に遭遇しています。ほとんどの場合、障害を持つ子供たちは家族(主に両親)のケアの下で生活をしています。彼ら、彼女らが成長し大きくなったとき、主たるケアを担っている方々も高齢になっています。在宅医療を受けていた子供たちが30歳、40歳になるころには、ご両親は60歳、70歳、もしかすると80歳を迎えているかもしれません。自身の体調不良や身体の不自由を抱えながら、障害を持つ子供のケアを続けることはとても難しいことです。残念なことですが、現在の医療・福祉では、障害を持つ子供に十分なケアをできなくなった段階で、介護施設等に入ることがほとんどです。医療の進歩とともに、生命の安全が保障され、健康の維持が可能になり、社会生活を送って何十年と共に過ごしてきた家族の最後の在り方を、今後考えていく必要があるのかもしれません。

メディセレ薬局 管理薬剤師

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